プラスチック

栄養士せんだい食エコリーダー専門調理師 Ayano’s Kitchen 花澤文乃さん

2022.01.25

日常の中で小さな選択をする時、私たちはあまり意識せず「いつも通り」の習慣で選ぶことがしばしばあります。しかし、その小さな選択を積み重ねた結果が、最終的に地球規模の危機につながってしまうとしたら、私たちは「いつも通り」を続けるでしょうか。
プラスチックの使用に関する選択が、その代表例です。いつも購入していたPETボトルの飲料を、マイボトルに替えてみた。ラップに包んでいたランチのおにぎりを、洗って何度も使えるケースに入れてみた。これらの行為は、いち消費者のほんの小さな選択に過ぎません。でも、膨大な数の消費者が習慣的選択を見直したら、地球環境の改善に大きなインパクトを与えることができるはずです。
今回インタビューに応じてくれたのは、仙台市内で日本料理や家庭料理の料理教室「Ayano’s Kitchen」を主宰する傍ら、専門調理師として大学や専門学校で学生を指導し、また「せんだい食エコリーダー」(※)として食品ロス削減の啓発活動などに従事する花澤文乃さんです。食にまつわるさまざまな仕事を続ける中でプラスチックごみに問題意識を持ち、1人の消費者として時に悩みながらもできることから取り組んできた、等身大のプラスチックごみ削減対策についてお聞きしました。

※食を通じてエコな暮らしを提案する活動を行ってもらうため、本市が平成30年度に開催した「冷蔵庫収納術」「食品保存・保管の基本」「食品ロスをなくすための料理の工夫」などの講座を受講し、食品を無駄なく使い切るための知識を学んだ市民の方。講座修了者20名。

Ayano’s Kitchen主宰 花澤文乃さん

—花澤さんがプラスチックごみについて考えるようになったきっかけは何ですか?

花澤さん
「プラスチックごみに関しては、食に関する仕事をしている中で少しずつ意識が変わっていきました。以前は、PETボトルやプラスチック資源はリサイクルされている、イコール環境に配慮しているから大丈夫なんだろう、と思っていたんです。でもそれは仙台市が家庭から回収しているもので、例えば自販機の脇のごみ箱に捨てられたPETボトルは事業ごみになるから、事業者の分別の仕方によってはどのように処理されているか分からない、ということでした。そんな話を聞いて、プラスチックごみを出すこと自体、気を付けていかなければならないんだと実感しました。」

—環境に配慮するなら、リサイクルしているからいいだろうではなく、そもそも使用量を減らすという考えに行きついたんですね。

花澤さん
「そう意識が変わったのにはもう2つ大きな理由があって、今年は気候変動の影響で農作物や水産物が大きな打撃を受けたという話を、身近なところでよく聞きました。顔なじみの生産者さんの果物が不作だったり、北海道のウニが不漁だったり。それによって、温暖化で食材にも影響が出ることを自分ごととしてとらえるようになりました。またマイクロプラスチックの問題を耳にする機会が多くなり、危機感を覚えるようになりました。」

—花澤さんが得意とする日本料理は旬の食材を大事にしますから、食に関わるお立場としては特に敏感に感じられる部分なのかもしれませんね。プラスチックごみ削減に関しては、具体的にどのようなことを実践していますか?

花澤さん
「我が家では、家族全員マイボトルを持つようにしています。容量ちがいで複数持っている家族もいます。入れている中身はそれぞれですが、私のおすすめは、体が温まる白湯ですね。マイボトル用のティーバッグもあるので、それを活用することもあります。食品ロス削減のために、ティーバッグの出し殻を活用するスコーンのレシピ開発もしました。」

花澤さんのご家族が所有するカラフルなマイボトルたち

—プラスチックごみだけでなく、食品ロスにも配慮しているのですね! 他にも、プラスチックごみ削減に向けて実践していることはありますか?

花澤さん
「はい、主に自宅で使用しているものになりますが、ラップの使用を抑えるために、蓋付きの器やボウルに料理を保存したり、器に乗せるシリコン製の蓋やラップを使ったりしています。あとは野菜の日持ちが良くなる洗って使える保存袋や、おにぎりケースも使っていますね。」

花澤さんご一家が約10年愛用してきたシリコン製のスチーマーとごはん保存容器

花澤さん
「このシリコン製のスチーマーやごはんの保存容器が良い例だと思うんです。実はこれ、同居している義理のお母さんが震災後に購入したもので、受け継いで一緒に使用してもう10年になります。ラップの使用が控えられるメリットもありますけど、何より自分たちの生活になじむ道具だったんです。こうした道具を大事にしながら長く使うことで新しい道具を買う必要もなくなり、結果的にはごみの削減にもつながっていくと考えています。」

関連記事