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株式会社J-オイルミルズ 生産戦略部 包装技術グループ長 日高 和弘さん、生産戦略部 包装技術グループ 田村 正和さん、油脂事業統括部 家庭用事業部 開発企画グループ 宮﨑  朋江さん、コーポレートコミュニケーション部 IR・サステナビリティ推進グループ 林 櫻さん

2023.2.10

 食用油やマーガリンなど、私たちの生活に身近な製品を製造・販売する株式会社J-オイルミルズ。原材料などに自然の恵みを活かした事業を営んでいることから、これまでも温室効果ガスの削減や廃棄物の削減・再資源化、プラスチックの使用抑制など、環境に配慮する取り組みを継続的に進めてきました。

 2021年には、新しい企業理念体系を制定し「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」を目指すべき未来(ビジョン)としています。植物由来の原料から価値を引き出すことで「おいしさ×健康×低負荷」の実現を目指し「環境負荷の抑制」をマテリアリティ(重要課題)の一つに位置付けています。プラスチックに関しては、2030年度までに廃棄量をゼロにする目標(※リサイクルされずに廃棄されるプラスチックごみを出さないこと)を掲げました。

 「プラスチック廃棄ゼロ」を達成するために、同社ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。取り組みを推進する方々にお話をお聞きしました。

左より、株式会社J-オイルミルズ 生産戦略部 包装技術グループ長 日高 和弘さん、
生産戦略部 包装技術グループ 田村 正和さん、
油脂事業統括部 家庭用事業部 開発企画グループ 宮﨑 朋江さん、
コーポレートコミュニケーション部 IR・サステナビリティ推進グループ 林 櫻さん

―――食用油の業界において、プラスチックの使用抑制に関しては近年どのような取り組みが進められていますか?

宮﨑さん
「食用油の業界では、まだまだプラスチックボトルや瓶の容器が主流なのが現状です。ただし容器の軽量化や一部再生材の使用を通して、プラスチックの使用抑制を進めてきました。たとえば当社のメイン製品である1,000gエコボトルでは、2002年比で約26%のプラスチックを減量化する取り組みを継続的に行ってきました。さらに当社では、油脂製品では珍しい紙パック容器の「スマートグリーンパック®」を2021年から販売開始して、プラスチック廃棄物の削減を推進しています。」

―――「スマートグリーンパック®」とは、どんな製品ですか?

宮﨑さん
「従来のプラスチック製の同容量帯容器と比較した場合、プラスチック量を60%以上削減(※同社計算による)する紙パック容器の環境配慮商品です。パッケージには酸素バリア性・遮光性に優れた素材を使用しているので、通常PET製品の賞味期間が1年のところ、「スマートグリーンパック®」は1年半~2年に伸び、食品ロス削減にも貢献できる特長も併せ持っています。」

「スマートグリーンパック®」シリーズにJOYL「AJINOMOTO やさしいOliveOil」(300g)と
JOYL「AJINOMOTO ごま油好きの純正ごま油」(300g)の2製品(2月22日より全国出荷開始)が新たに加わり、全9製品に。
さらに既存製品の容器デザインを一新し、3月上旬以降に順次出荷開始します。

―――紙パック容器製品の開発は、脱プラスチックに向けての画期的な取り組みですね。開発の経緯を教えてくれますか?

宮﨑さん
「当社では、サステナビリティ関連施策について社内横断的に議論を進める「サステナビリティ委員会」を設置しています。各部会の傘下のひとつに容器包装について研究・情報交換を行う「パッケージング分科会」があり、分科会の提言というかたちで開発がスタートしました。」

―――開発の中で、特に注力した部分はどこですか?

田村さん
「お客様により一層の使いやすさを享受していただけるように、使用性の向上に努めました。たとえばキャップの部分ですが、紙パック容器のキャップは斜めに取り付けるので油だれがしやすい点が課題でした。そこで油だれしにくく用途に応じて注ぐ量を選べるWキャップ構造を採用し、何度も注ぎ試験をして現在の形状に至りました。」

上蓋を開ければ少量、揚げものなどで多く使いたい時はキャップを外してと、
用途に応じて使い分けられるWキャップをはじめ、
日常で使いやすい製品をと、4つの配慮が取り入れられました。

田村さん
「また油を使う際に手で持ちやすいよう、側面にエンボス加工を施しました。さらに容器には折りたたみ線を入れて、廃棄の時に容量を約1/2(※同社600gUDエコPET比較)に減容化できるようにしました。」

左が「スマートグリーンパック®」、右がプラスチックボトルです。
折りたたんだことで「スマートグリーンパック®」の容量が非常に小さくなったことが分かります。

―――さまざまな工夫がなされていますね。実際に使用したお客様のお声、また社内での反響はいかがですか?

宮﨑さん
「「スマートグリーンパック®」は、環境配慮を意識して購入されたお客様が、実際に使用してみると油だれしにくいことや簡単にたたんで廃棄できることなど、利便性も高いため継続して使用している、との声をいただいています。“環境に配慮した製品を”と開発が始まりましたが、さらに使いやすさにこだわったことがお客様の評価につながり、本当に良かったと感じています。また社内からは、子どもやその先にも伝えていける製品をつくっている企業として自信が持てるようになった、そうした製品を扱っているのが嬉しい、という声があがりました。」

―――ありがとうございます。他にも、プラスチック廃棄ゼロにむけたさまざまな取り組みがありますね。

日高さん
「当社では、廃棄物の削減と再資源化を促進するために「容器包装に関する指針」を策定しています。この指針によって、石油由来のプラスチックの使用を抑制するさまざまな取り組みを進めています。たとえば宮﨑が申したとおり、プラスチック容器の軽量化は継続的に取り組んできました。また再生材や植物由来のバイオプラスチックの使用推進も進めています。家庭用マーガリンの「ラーマ®バター好きのためのマーガリン」「ラーマ®お菓子作りのためのマーガリン」には、バイオマスプラスチックを約10%使用した容器を採用しています。」

「ラーマ®バター好きのためのマーガリン」「ラーマ®お菓子作りのためのマーガリン」には、
サトウキビ由来の植物性プラスチックを一部採用した容器が使われています。

日高さん
「また廃棄されたプラスチックをリサイクルしやすいようにするために、素材の単一化(モノマテリアル化)などについても情報収集を進めています。こうした廃プラスチックの有用化については単一の企業だけで実現するのは難しいため、外部団体や企業連合などと連携しながら進めていきたいと考えています。」

―――ありがとうございます。プラスチック廃棄ゼロのほかにも、CO2に関して排出ゼロの目標を掲げていらっしゃいますね。

林さん
「CO2排出量については、当社では2020年度までにCO2排出量を1990年度比で45%削減する目標を掲げ取り組みを続けてきましたが、2020年度には45%以上の削減を達成することができた経緯がございます。今後はScope1(燃料の燃焼などによる自社の直接排気)、Scope2(電気などの使用に伴う間接排気)において、2030年度までに2013年度比で50%削減、2050年度までに排出ゼロにするカーボンニュートラルを掲げています。」

自社でのエネルギー創出設備の設置やエネルギーの利用効率化を推進することで、
2020年度のCO2排出量は1990年度比で45%以上の削減を達成しました。

林さん
「現在は、目標の達成にむけてロードマップを精緻化している段階です。特に製油業界では原材料の配送に係る部分が大きいので、Scope3(Scope1、2以外の間接排出)の中でもカテゴリ1(原材料の調達など)の削減にむけて、検討を進めています。」

―――ありがとうございます。プラスチックやCO2など、環境への負荷を減らすさまざまな取り組みが進められていることが分かりました。

林さん
「2021年に新しい企業理念体系を策定した際、「おいしさ」「健康」という食品会社としての根源的な役割と責任に「低負荷」というキーワードを加え、よりサステナビリティを意識した方向へと舵を切りました。「スマートグリーンパック®」はそうした我々の姿勢を体現する製品ということで、ぜひ広く知っていただきたいと考えています。今後も、低負荷で皆様に受け入れていただけるような製品を、ますます世に送り出していきたいと考えています。」