プラスチック

株式会社エフピコ サステナビリティ推進室 サステナビリティ企画推進課 チーフマネージャー 若林 大介さん、橋本 緑子さん、マネージャー 飯田 英人さん

株式会社エフピコ 使用済食品トレーが再生されてお店に戻る!エフピコ方式のリサイクルって何?

 株式会社エフピコは、スーパーやコンビニエンスストアなどで使用される食品トレーを専門に製造するトップメーカーです。これまで、色柄付きの食品トレーや電子レンジ対応容器の蓋で、ソースやタレが付着したまま電子レンジにかけても穴があきにくいエコOPET素材の食品トレーを初めて開発するなど、ニーズに応じたオリジナル製品の開発にチャレンジして食品トレーの可能性を拓いてきました。

*「エコOPET」:回収されたPET透明容器、PETボトルを原料としたエコPETシートを二軸延伸し成形したリサイクル容器(耐油性に優れ、透明度も高くOPS容器と同等の耐熱性を実現)

 製品のリサイクルにも積極的に取り組んでいます。1990年に自主的に始めたリサイクル事業では、消費者が使い終わった食品トレーや透明容器、PETボトルを店頭で回収してリサイクル工場で原料に戻し、食品トレーに再生する「循環型リサイクル」(エフピコ方式のリサイクル)を世界で初めて確立。6店舗からスタートした店頭での使用済食品トレー回収は、2023年現在約1万500店舗に拡大。製品の原料は、リサイクル素材が57%を占めるまでに成長しました。

 エフピコの使用済食品トレーの回収は仙台市内のスーパーマーケットなどでも実施されており、私たちにとっても身近な取り組みです。そこで今回は株式会社エフピコ サステナビリティ推進室の若林大介チーフマネージャー、飯田英人マネージャー、橋本緑子さんにご協力いただき、エフピコ方式リサイクルの詳細や、私たち消費者が出した使用済食品トレーはどのようにリサイクルされるのか、また私たちがこのリサイクル活動に協力する時の注意点などをお聞きしました。

左より、株式会社エフピコ サステナビリティ推進室 サステナビリティ企画推進課
チーフマネージャー 若林 大介さん、橋本 緑子さん、マネージャー 飯田 英人さん

―――「エフピコ方式のリサイクル」とは具体的にどのような取り組みなのか教えてください。

飯田さん

「消費者、スーパーマーケット、包装資材問屋、エフピコの4者が協力し、取り組み当初から回収は全て無償のいわゆる受益者負担で成りたっています。まず、消費者の皆様に使用済食品トレーをスーパーマーケットなどの回収ボックスに入れていただきます。店頭で回収された使用済食品トレーは、食品トレーを含む品物を納品した包材問屋の帰り便のトラックで引き取り、一時保管していただきます。その後、包材問屋に食品トレーを配送したエフピコ自社トラックの帰り便に使用済食品トレーを乗せてリサイクル工場に運びます。リサイクル工場で再生された「エコトレー®」などは自社トラックで包材問屋へ、さらに包材問屋からスーパーマーケットなどに卸して再び消費者のもとに届くという、食品トレーがぐるぐると循環する仕組みになっています。」

エフピコ方式のリサイクルは、消費者、スーパーマーケット、包装問屋、エフピコの4者の協力により成り立っています。

橋本さん

「使用済食品トレーや透明容器、PETボトルをスーパーマーケットなどの店頭で回収し、再びリサイクルされたトレーや容器は、「エコトレー®」「エコAPET®」「エコOPET®」と呼ばれます。環境に配慮した製品であることを分かりやすくするために、エコ製品に「エコマーク」や「ペットボトルリサイクル品」といった環境マークを刻印し訴求しています。また、弊社では製品のLCAを実施しており、素材製造から廃棄・リサイクルのライフサイクル全体で弊社が生産するバージン容器に対して、30%のCO2削減が可能です。」

リサイクルされたエコ製品には「エコマーク」や「ペットボトルリサイクル品」の表示刻印をしています。

―――お店で回収した食品トレーがリサイクルされて、再び同じお店に戻るのですか?

飯田さん

「はい。お客様がお買い物をされるお店がリサイクルの発着点となるので、私たちはこれを“ストアtoストア”と呼んでいます。お客様が出した使用済食品トレーや容器、PETボトルが、リサイクルされて再び同じお店から自分の手元に戻ってくる、ご自身の環境配慮行動が目に見えて分かりやすい取り組みですので、ぜひ多くの皆様に知っていただきたいと思っています。仙台市内でも、店頭で“当店で回収してリサイクルされた食品トレーを使用しています”といった啓発ポップを掲出してくださるスーパーマーケットが増えています。」

店頭に“ストアtoストア”の啓発ポップを掲出することで、消費者の環境配慮行動をより分かりやすく可視化しています。

―――もし私が使用済食品トレーを店頭に持って行った当事者だったら、自分が使った食品トレーがまた自分の行きつけのお店に戻ってくることに驚きと喜びを感じると思います!仙台市内での食品トレー回収を事例に、“ストアto ストア”の詳しい仕組みについて教えていただけますか?

若林さん

「仙台市を含む東北一円のスーパーマーケットから回収された食品トレーは、山形県寒河江市にある自社リサイクル工場の「山形選別センター」に集められます。ここでは、白トレーと色柄トレー、リサイクルできるもの・できないものに手作業で選別をしています。リサイクルできるもののみ圧縮をかけて茨城県の「関東リサイクル工場」に配送し、ペレット状に原料化して再び山形県に戻します。このペレットをシート状に加工して成形したものが「エコトレー®」です。使用済食品トレーをペレットに加工する機械は、当社では国内3ヶ所にのみ保有しているのでその工程だけ東北を離れますが、他の工程は地産地消に近いかたちでリサイクルしています。」

リサイクル工場では、手選別で使用済トレー以外のものを取り除いています。

―――食品トレーをリサイクルする時、白いトレーと色柄トレーに選別してペレットにしているようですが、どちらも「エコトレー®」に再生されるんですか?

飯田さん

「白トレーは白いペレットになって再び白いトレーに戻りますが、色柄トレーはインクが混じるので黒いペレットになります。黒いペレットからは白トレーにも色柄トレーにもしにくいので、現在はハンガーやおもちゃなど黒色のプラスチック成形品としてリサイクルされています。ただし昨今、市場で色柄トレーが使われる量が増えてきたため、色柄トレーも再び白トレーや色柄トレーに戻せるように技術開発が進められています。」

若林さん

「私たちは食品トレーの原料であるポリスチレン樹脂の完全循環をめざしています。ポリスチレン樹脂の原材料は原油ですが、食品トレーの約95%は空気でできているのでほんのわずかな原油で製造することができます。ポリスチレン樹脂からできる食品トレーは軽くて強くて耐久性がある、さらに少ないエネルギーで簡単にリサイクルすることもできます。この便利な素材を長く使うための完全循環なのです。色柄トレーを再び食品トレーに戻す技術開発は、黒いペレットからインクの色を分離させる方法や、黒いペレットを熱分解・精製を経て白いペレットに戻すケミカルリサイクルを研究中で、2025年~2027年の実装をめざして準備を進めています。」

色柄トレーを白色トレー、または色柄トレーにリサイクル方法が研究されています。

―――未来のリサイクル素材を確保するために、リサイクルの手法を広げているんですね。さらに御社のリサイクル事業を拡大するためには、消費者から出るリサイクル素材の回収量を増やすことも大切だと感じます。

飯田さん

「回収量の増大に対しては、これまでと変わらず啓発活動を継続しています。たとえば消費者の皆様にリサイクル工場の見学にお越しいただいたり、私たちが全国の学校に出前授業に行ってリサイクルについてお話をさせていただいたりしています。また、エフピコの取り組みを伝える教育マンガ『食品トレーのひみつ』を発刊し、全国の小学校や公立図書館に配布して多くの方々の目に触れる取り組みを続けています。おかげさまで2022年度は、リサイクル工場見学に4,200名のお客様に来ていただき、出前授業は92校、5,546名の生徒さんにお話をさせていただくことができました。」

未来の消費者に環境に配慮する意識を養ってもらおうと、学校での出前授業が行われています。

―――地道な活動が大きく実を結ぶんですね。では実際に私たちが使用済食品トレーを回収ボックスに出す場合、どんなことに気をつけたらよいですか?

回収ボックスには、リサイクルが可能な食品トレーのみ投入するようにしましょう。

橋本さん

「エフピコで回収している食品トレーは、つまようじが刺さって、簡単に割れるものを回収しています。使用済食品トレーは洗ってよく乾かしていただき、輪ゴムでくくったりレジ袋に入れたりせず、そのまま回収ボックスへの投入をお願いいたします。また、回収ボックスにはリサイクル素材にならないものも入っていることがあります。特に、豆腐・納豆・カップ麺・カップ焼きそば・トレーの後ろにシールが付いた容器です。この5つはとても多いので、回収ボックスには入れないようお願いいたします。」

食品トレーは洗って乾かしたものを回収しています。リサイクルできない容器もあるので気をつけましょう!

―――リサイクル工場の方々が手選別する際に少しでも効率よく作業ができるように、私も気をつけたいと思います。

取材協力:株式会社エフピコ