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カブトムシで、ごみ問題も食料問題も解決!

ごみ・環境と食にまつわる深刻な社会問題

食べられるのにごみになってしまう食品、将来の食料需要など、環境と食にかかわる社会問題は日本国内でも世界規模でも深刻化しており、課題は山積しています。
 例えば、手つかず食品を含む生ごみは、コンポストなどを使えば、たい肥にできる有機物です。しかし、生ごみは仙台市の家庭ごみの3割(令和3年度実績:重量ベース)を占めており、運搬や処理には多くの税金やエネルギーが使われています。
 また、世界では人口が増加しており、増え続けるごみの処理の問題はもちろん、2030年以降には、人口に対してタンパク質の需要と供給のバランスが崩れることで、タンパク質が不足する「タンパク質危機」が起こるのでは、とも言われています。
 今回お話を伺ったのは、この深刻な問題に、「昆虫」の力で立ち向かうスタートアップ企業です。

せまりくるタンパク質危機

ブレイクスルーは、自宅のコンポストから

 昆虫に有機物をエサとして食べさせ、ごみ減量や昆虫食のサービスを展開する(株)TOMUSHIの石田陽佑CEO。秋田を拠点に、全国各地にサービスを拡大しています。

(株)TOMUSHIの石田陽佑CEO

 「会社名は、(株)TOMUSHIと書いて「カブトムシ」と読ませます。もともとは昆虫が好きで、東京から秋田に兄弟でUターンし、カブトムシを育てる事業を始めました。会社設立当初の2019年当時、カブトムシを育てるためにもエサ代がかかることが課題でした。

 生ごみを活用すれば、カブトムシのエサ代を圧縮できるだけでなく、ごみ問題も解決できるのではと考えた石田さん。試行錯誤の末、生ごみ等を昆虫のエサにするための微生物を利用する技術の確立や、成長スピードが速くごみを大量に食べるカブトムシの品種を育て上げることに成功しました。現在は、さらに大学等とも連携をした研究を進めています。

個体交配でごみ削減に特化したカブトムシ

連携先はごみに悩む企業や農家

 ごみは捨てるのにも費用がかかります。これは、運搬や焼却に費用がかかることが原因です。燃料代や人件費が高騰している中で、企業や農家にとっては手痛いコストとなっています。
 そこで(株)TOMUSHI社では、企業や農家と連携し、捨てればコストになるものを昆虫のエサにすることでごみを減らすサービスを展開。例えば、きのこの廃菌床(きのこを育てた材木等)や畜産糞尿、フードロス、生ごみなどを、カブトムシの飼料にし、育成するプラントを提供する仕組みをつくることで、企業・農家のコスト削減に貢献しています。

TOMUSHIが創るサイクル

 (株)TOMUSHIの着実な取り組みが広がり、協力企業や農場も着々と増加。令和5年2月現在で全国40箇所のプラントを連携、展開し、1年間で900トンのごみになるはずの有機物を、資源に変えてきました。また、大手コンビニチェーンなどと連携し昆虫食の商品開発も行っています。
 石田さんはその先の構想を見据えています。「いかに多くのごみを資源に変えられるかが(株)TOMUSHIの次のチャレンジです。そのために、企業や自治体とも連携が進めています。」企業との実証実験、商品開発だけでなく、自治体と共同でのプラント設置なども進めています。
 石田さんによると、2027年の上場を目指しており、国内はもちろん、ごみ問題や食料問題が深刻な東南アジアなどへもこの取り組みを進めることも検討していると言います。

仙台でも、昆虫からごみ問題を学べる!

 仙台市でも、JR東日本と連携した実証実験のほか、2023年夏休み頃には、ごみを食べて育ったカブトムシに触れあえるイベントの開催を予定しています。「子どもたちがカブトムシを通じて、ごみやSDGsを考えるきっかけになれば」と石田さんは言います。
 「今も、日本では多くの生ごみは焼却されてCo2の排出の原因になっています。昆虫の力で、仙台市のみなさんとも、世界の食料問題解決のための取り組みを進めていきたいです。」
 自宅のガレージからスタートし、世界の食料問題を見据える(株)TOMUSHIの取り組みに今後も注目です。