プラスチック

わたしたちの街の海について
企画者 庄子隆弘さん

深沼ビーチクリーンに参加することとは

海洋プラスチックごみが世界的な課題であることは、様々なメディアが伝えています。もしかしたら、どこかで、海洋プラスチックごみが地球にどんな影響を与えているか、写真などで見たことがあるかもしれません。でも「それはきっとどこか遠くの海の話、まだ日本の、仙台の、自分たちの暮らしには関係ないのでは」と思っているかもしれません。 そこで、実際にわたしたちの身近にある海がどんな状況なのか調べて、そこから気づきや行動するきっかけをつくれないか、と考えました。

わたしたちの身近な海として、まず思いつくのが荒浜の海岸ではないでしょうか。仙台市唯一の海水浴場として、震災前は夏になると多くの海水浴客で賑わい、仙台に暮らしていれば、一度は訪れたことがあるという方も多いのでは。 震災以降は、地域の方たちがいろいろな想いを持って、荒浜の海岸に関わってきました。なかでも地域の方の想いから始まった『深沼ビーチクリーン』は毎月第2日曜日の海岸清掃を通して、地域の海との関わり方を考えるのはもちろんのこと、環境問題にも取り組める活動です。 『深沼ビーチクリーン』の活動を紹介します。

「深沼ビーチクリーン」の活動を紹介します。企画者である庄子隆弘さんへのインタビューです。

―庄子さんは、ずっと荒浜に住んできたんですよね。

庄子さん
「ずっと、ここに住んできたから、海を毎日見ているのは当り前のことだったんです。小学校でも中学校でも、海岸を清掃しに行く、というのは普通にありましたし、夏になって海水浴で賑わうとごみが増えて嫌だなぁ、片付けなきゃなぁと子どもの頃から思っていました。」

―庄子さんは震災後、自分が暮らしてきた地域についてできることは何かと模索していたそうですね。

庄子さん
「震災後はここに住めないということになってしまって、どうしても現地再建できないのかと地域のみんなは悩んでいました。そうした中で『荒浜再生を願う会』の活動がありました。会の設立当初は参加していなかったのですが、震災直後はけっこうハードな活動をしていましたね。それが、次第に荒浜の魅力を考えてみよう、伝えていこう。気軽に来てもらって、荒浜のことを知ってもらおう、と変わっていきました。海岸清掃だけでなく、石窯ピザや豚汁などのおふるまいを通して、参加者と交流できるような場づくりを心掛けることで、地域の方たちだけではなく、いろいろな方が参加してくれました。」

海辺の図書館 / フカヌマビーチクリーン 庄子隆弘さん(中央)

―庄子さんはさらに『海辺の図書館』を立ち上げましたね。これは文字通り、海辺にある図書館ということで、本もあるわけですが、みなさんがイメージする従来の図書館というよりは、人が集まる場としての図書館ということを強く意識されて始めたと聞きました。

庄子さん
「自分は図書館が好きで、仕事も図書館に関係する仕事に就いたのですが、荒浜の地域の方たちの話を聞いていると、世代はバラバラでも、魅力的な話が多くあります。そして、そうした話こそが蔵書だなぁと思って、地域全体を図書館と考えたら、面白いんじゃないかと思ったんです。」

―おもしろい発想ですね。その発想は、今のビーチクリーンの運営の仕方にもつながっていますね。

庄子さん
「当初の目的を達成したということで、『荒浜再生を願う会』は2018年に解散しました。ただ、海岸清掃は続けていけたらと思って、体制を変えて、継続してきました。と言っても、やり方や内容は変わっていなくて、毎回いろんな方が参加してくれて、ワイワイ楽しく、子どもたちも多く参加しています。途中で来てもいいし、途中で帰ってもいい。そんなやり方なので、継続して来てくれる方もいれば、時間ができた時に来てくれる方もいます。毎月第2日曜日に開催していますが、その日は都合が合わないということで、他の日に自主的に来て、清掃している方もいます。波の音があって、風の音があって、当り前ですが、海の大きさがあって、そこには多様性が自然と生まれてきます。ごみを拾うという目的だけではなく、参加することが楽しい、そう言ってもらえることも多いんです。」

―ずっと、この海を見てきた庄子さんだからこそ、ごみなどの海の様子の変化もわかると思うのですが、どうでしょうか。

庄子さん
「震災から時間が経ってきたことで、跡地利活用の受託先が決まったり、海水浴が限定的ではあるけれど再開したりして、ふと立ち止まって考えると、荒浜に来てほしい、海を見てほしいと思っても、ごみがたくさんあって、ガラスの破片が落ちていたりと危なくて、裸足で歩けないよなぁと思うんです。防潮堤工事のために石もたくさん入れられて、撤去されても、まだたくさん残っていますしね。なので、ビーチクリーンを通して、ごみの不法投棄や石の撤去など、行政の方たちとのやりとりの必要性も意識するようになりました。また、ごみって季節によって違うんです。夏になると使用した花火などが多くあったりして。なので、それぞれの季節のビーチクリーンに参加してもらうといろんな発見があると思います。」

―間もなく震災から10年という話題は増えていくと思いますが、庄子さんはいま、どんなことを考えているのか、最後に教えていただけませんか。

庄子さん
「震災という悲しい、ネガティブなイメージを少しずつ変えていきたいというのはありますね。ビーチクリーンで子どもたちが楽しくやっている姿を見て、何を感じるか、なんだと思います。環境問題の話としては、海はつながっているので、例えば蒲生がもうや閖上ゆりあげなど他の地域の海岸清掃をしている方たちと交流して、課題の共有をしていけたらいいのかなと思いますね。海の大きさに対して、人ができることは小さいのかもしれませんが、地道に続けていくことが大事だと思っています。」