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市民協働で築く循環型社会~ACT53仙台の環境活動史~
35年にわたり「生活者の視点」で地球環境を守り続けるACT53仙台
1991年1月の発足以来、35年にわたり生活者の立場から地球環境を守る活動に取り組んできたACT53(アクトごじゅうさん)仙台。「100人のうち53人(半分以上)の人が変われば世の中は変わる」との願いを込めて、ごみ(53)について知恵・アイデアを出し合い、積極的に活動(ACT)してきました。その活動は、リユースマーケット「もったいない市」、グリーンコンシューマー活動、出前講座など、時代の変化に合わせて柔軟に形態を変えながら今に続いています。
また団体単体での活動にとどまらず、行政や他の市民団体と協働しながら蒔いてきた「エコな種」が今、社会の中で次々と芽吹き、枝葉を広げて成長してきた実績も見逃せません。
今回は、団体の発起人であり代表の矢吹真理子さんと、主要メンバーの一人である木下牧子さんに、発足の経緯やこれまでの活動の足跡、そしてこれからの活動のあり方についてお話を伺いました。
「私にできることは何か?」一人の主婦の問いから始まった環境活動
矢吹さんが地球環境問題に興味を持ったきっかけは、1990年に遡ります。仕事と子育てに追われ、自分の意志が損なわれたような日々の中で、矢吹さんの心を揺さぶったのが地球環境問題でした。当時は地球温暖化やオゾン層破壊など、環境問題が国際的な課題として認識され始めた時代です。また、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミット(国連主催の大規模環境会議)の準備段階というタイミングもあり、矢吹さんは環境に関する報道をはじめ、さまざまな情報を集めて知識を深めていきました。
矢吹さん
「でも、地球環境問題って大きすぎて『一体私に何ができるの?』という壁にぶつかりますよね。それを考えたとき、実は日々の生活の中で取り組めることがあるのではないかと思ったんです。そこでたどりついたのが『ごみ』というテーマでした。
まずは市役所の環境事業局(現在の仙台市環境局)に単身で出向き、ごみの減量に関する自分の考えを伝えました。市の担当の方からは『仲間を探すこと』をはじめ、多くの助言やサポートをいただきました。環境問題に興味がある市民の方々に集まっていただき、対話を重ねるうちに、ACT53仙台発足の下地が固まっていきました。」
リユースから買い物ガイドまで!生活に根ざした多彩なアプローチ
生活者の立場からごみ減量のためにできることを模索し、発足からわずか3ヶ月という準備期間を経て実施したのが「もったいない市」です。勾当台公園にぎわいの広場(市民広場)を会場に、市民が家庭での不要品を持ち寄って出店し、必要とする人に販売するリユースマーケットです。2022年まで年2回定期的に開催されたこのイベントは、単なる物の売買だけでなく、リユースを通して「物を大切にする心」を広めていく重要な役割を果たしました。
ACT53仙台の活動は、さらに広がっていきます。買い物の際、価格や品質と同様に「環境」という視点を選択の判断材料にする消費者「グリーンコンシューマー」を増やす活動です。1996年には、多くの市民が環境に配慮した買い物ができるよう、仙台市内のスーパーや百貨店を対象に、環境への取組を取材し5段階で評価した『仙台お店のつうしんぼ’96』を発行しました。さらに、その後店舗の取組の変化を追跡するため『杜のエコラの宝物 仙台お店のつうしんぼ2002』も発行。消費者だけでなく、小売業界の方々にも環境配慮への気づきを与えるきっかけとなりました。
また、活動を続けるなかで「布のリユース・リサイクル」に関しての取組も大きく成長しました。現在では、古い着物や毛糸、ハンカチ、ボタンを用いてリメイク作品づくりを楽しむ「もったいないサロン」、イベント等で不要の衣類やシーツ・タオルなどを回収する「古布の山」、風呂敷ラッピングを楽しく学ぶ出前講座なども行っています。
行政との信頼関係が築く、風通しのよい循環型社会への歩み
矢吹さんが単身で市役所に飛び込んだ1990年当時、仙台市環境事業局はごみの“処理”に重きを置く部署でした。しかし、時代の流れとともに矢吹さんのような市民が増え、生活者自身が環境を守りたいと願う機運が高まってきたことを受け、組織は現在の環境局のように、市民向けの啓発活動や協働事業も担う形へと変化していきました。そして1999年度には、環境負荷が低減された循環型社会の構築を目指し、市民・事業者・市が協働で取組む「100万人のごみ減量大作戦」がスタートしたのです。
ACT53仙台も、仙台市や他の市民団体と手を取り合い、多様な活動に従事してきました。たとえば、2000年度には環境配慮型店舗(エコにこショップ)認定制度(※現在の「仙台市環境配慮事業者(エコにこマイスター)」の前身)がスタートし、矢吹さんは環境配慮に取組む店舗の認定を行う委員会で委員長として意見交換を行ってきました。
また、市民団体・業界団体・行政が連携する「アメニティ・せんだい推進協議会」にも、構成団体の一つとして参画。エコイベントなどの各種事業を通じ、ごみ減量・リサイクル・まちの環境美化を広く市民に訴える活動のなかで、企画段階から積極的に意見を交わし、環境イベント「エコフェスタ」や「包装削減キャンペーン」を推進するなど、幅広い活動に取り組んでいます。
木下さん
「ACTには多様な得意分野を持つメンバーが揃っていて、それぞれが自分の居場所で環境配慮の種を蒔いています。個々の活動やアイデアをACTに持ち寄って互いの知識を共有することで、ACTのメンバーとしてさまざまな場所で提言活動を行ったり、自分の分野で発展させたりできる。そんなポジティブな循環ができている団体だと思います。」
矢吹さん
「先日、仙台市外からいらした大学の先生から『仙台市の環境行政は、行政と市民の“対立”から始まっていない点が非常に珍しい』と驚かれました。自然保護などの現場では、市民団体と行政がぶつかり合うケースが多いのだそうです。
しかし仙台市では、さまざまな分野で行政が市民団体と一緒に動く際には意見交換を行い、私たちの提案を取り入れてくれる土壌があります。その信頼関係があるからこそ、環境行政がスムーズに進んでいるのだとおっしゃってくださいました。
私自身も、風通しの良い環境のなかで『もっとこうすれば良くなるよね』と率直に言い合える関係を築けたことは、大きな財産だと感じています。」
個々の知恵をかけ合わせ、行政と連携することで、ACT53仙台は地域に根ざした確かな変化をもたらしてきたのです。
次世代とともに創る未来!企業と市民を繋ぐ新たな対話の場を目指して
「もったいない」の心を育み、グリーンコンシューマーを育成し、市民協働の実績を積み重ねてきたACT53仙台。その間、世の中の環境に対する意識は劇的に変わっていきました。こうした現状を踏まえ、矢吹さんは今、どのような未来を見据えているのでしょうか。
矢吹さん
「今強く感じているのは、若い世代の意見を拾い上げる場がもっと必要だということです。現在はネット社会になり、対面でのリアルな情報交換が減っていますよね。その影響か、他者の意見に対して『私はこう思う』と対話が広がっていく機会が少なくなってきているように感じます。
また、最近のエコフェスタでは企業の勢いが目覚ましく、環境配慮への熱意を強く感じます。もし企業と市民を繋ぐことができれば、より大きなアクションに繋がるのではないかと感じています。そのためにも、仙台市にはつなぎ手としての役割を期待したいです。そしてその上で継続的な情報交換の場を持ち、互いの信頼関係を成熟させていくことができればいいなと思っています。」
市民、企業、そして行政。それぞれの立場を超えて手を取り合い、より良い地球環境を次世代へ引き継いでいく。ACT53仙台の挑戦は、これからも続いていきます。




