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街の小さなカフェから始まる、心地よくてサステナブルな暮らしのかたち
街に溶け込み、日常に寄り添うカフェ『drop by GINKGO』
定禅寺通と並行する春日町の路地を歩いていると、ふと足を止めたくなる温かな雰囲気のお店に出会います。オーナーの武居明子さんが2023年から始めた小さなカフェ『drop by GINKGO(ドロップバイジャンコ)』。店名は、仙台の街を象徴する宮城県庁前の美しい銀杏並木(フランス語でGINKGO)と、“ふらっと寄り道してほしい”という想いを込めた「drop by」に由来しています。
口に入れた瞬間にバターがじゅわっと溢れる「しみじゅわバタートースト」を看板メニューに、丁寧に仕込んだスープやデリ、スイーツなどを提供。デリはテイクアウトも可能です。
お店の魅力は美味しいメニューだけにとどまりません。メニューに使用する食材やテイクアウト容器など、お店を構成するさまざまなモノ・コトにサステナブルな視点が盛り込まれています。
なぜカフェでサステナブルな取組を始めたのでしょうか?武居さんにお話を聞いてみました。
コロナ禍での葛藤と「ごみを出さない飲食業」への想い
『drop by GINKGO』が環境配慮を意識したお店になったのは、開店準備のタイミングで起こったある出来事がきっかけです。宮城県出身の武居さんは、東京のレストランなどでパン製造や調理の経験を積んだ後、飲食店の開業を見据えて仙台へ戻りました。その頃は、新型コロナウイルス感染症拡大の真っ只中。大きな打撃を受ける飲食業界を少しでも応援しようと、飲食店のテイクアウトを利用するようになりましたが、利用するたびに目にする使い捨て容器やカトラリーなどを見て、ごみの増え方に疑問を抱くようになったといいます。
「感染防止を優先すると仕方のないことだと思いましたが、これから自分がお店を始めるにあたって、もっとごみを出さない方法はあるんじゃないのかな、という思いを1つの軸にしてオープンの準備を進めていきました。」
もともと武居さんは、幼い頃からの家庭での経験を通じて、食に対する配慮や丁寧な意識を自然と身につけていました。無理のない範囲で無農薬野菜を選んだり、シンプルな調味料で調理したりと、「自分が躊躇なく口にできるもの」「心から気持ちいいと思えるもの」を選ぶことを大切にしてきました。
こうした背景のもと、環境配慮やごみ削減を軸に据えたお店のコンセプトが形作られていきました。
美味しく楽しく実践する『drop by GINKGO』のサステナブルな取組
そんな武居さんの想いを具現化した『drop by GINKGO』では、次のようなサステナブルな取組を行っています。
食材のまるごと利用と地域循環
安心安全な無農薬・減農薬野菜を優先的に仕入れ、皮なども可食部として余すことなく調理に活用。どうしても出てしまう調理くずや生ごみの一部(卵の殻やコーヒーかすなど)は、取引のある近郊の生産者に引き渡して、たい肥として活用してもらうことで「資源の地域循環」を実現しています。
食材の相互利用が可能なメニュー開発
スープやデリに使用する旬の野菜など、手に入った食材に合わせて柔軟にメニューを考案し、複数のメニューで同じ食材を活用することで食材の廃棄リスクを低減しています。近郊の生産者との繋がりはもちろん、県外の信頼できる生産者からの共同購入を活用し、持続可能な食の提供を続けています。
環境配慮型容器の使用とマイ容器対応
カフェで使用する器やデリのテイクアウト容器は、環境に配慮したものをセレクト。また、テイクアウト利用にはマイ容器やマイバッグの持参を推奨しています。マイ容器を持参したお客さんには「木製コイン」をお渡しし、次回の飲食や買物での割引に利用してもらっています。使い捨てになりがちな紙のスタンプカードではなく、繰り返し使える木製コインを使用しているところにも、お店のコンセプトが表れています。
木材を再利用した温もりのある内装
山形県の芸術祭で使用された後に行き場を失っていた木材を、リノベーションを得意とする設計士の手によって店内のカウンターやテーブルに再利用。武居さん自身もDIYで壁のペンキや漆喰を塗るなど、手づくりならではの温かみのある空間づくりをしてきました。
「お店をやってみて、飲食店を運営するとあっという間にごみが増えてしまうことを実感しました。そんな中でも、“燃やすしかないごみ”を減らしたいという気持ちで取組を続けています」と武居さん。仕込みに使う消耗品を見直したり、たい肥化できる生ごみを分別したりと、さまざまな工夫を重ねることで、『drop by GINKGO』から排出されるごみの量を少なく抑えられているといいます。
「マイ容器」で広がる輪とお店独自の楽しい工夫
前述の通り、お店ではテイクアウト時に発生するパッケージごみを削減するため、マイ容器やマイバッグの持参を呼びかけるとともに、必要な量だけ購入できるようデリの量り売りにも取り組んでいます。
一方で、飲食店の営業においてプラスチックは切り離すことのできない素材でもあります。武居さんは、プラスチックを悪いものと捉えるのではなく、お客さんの利便性にも配慮しながら、必要な場合には環境配慮型のワンウェイ容器を用意し、適切な分別を促しています。マイ容器の持参を強制するのではなく、無理なく楽しく参加してもらうことを大切にしています。
お店のオープンから3年が経過し、マイ容器の持参を定着させる試行錯誤を重ねる中で、今年1月からは毎月最終土曜日に「マイ容器de GINKGO」という、テイクアウト限定のマイ容器おすすめデーを始めました。これは、週末のお買い物やお出かけの際に、気軽にマイ容器を持参してもらうきっかけをつくるための試みです。
お店には武居さんのデリをはじめ、近郊の生産者から仕入れた旬の野菜や地域のパートナー店舗が手がける安心安全な食品などが並べられ、訪れたお客さんには、持参したマイ容器やマイバッグを使って商品を持ち帰ってもらい、量り売りならではの楽しさを体験してもらいます。もちろん、買い物をしたお客さんには次回使える木製コインをお渡ししています。
「マイ容器de GINKGO」を半年以上続けてきた経験を通して、武居さんは「毎月決まった日に集中的に行うイベントにとどまらず、より日常に自然にフィットする形に柔軟に進化させていきたい」と話します。近隣に住む人やオフィスで働く人たちが気軽に立ち寄り、無理なくごみを減らせるような新しい取組やアイデアを、常に模索し続けています。
気軽なひと工夫から、心地よいサステナブルな暮らしが広がる
『drop by GINKGO』の魅力とサステナブルへの想いは、店舗の枠を飛び出し、地域のさまざまなイベント出店を通じても発信されています。
今秋は、泉区で開催される大人気イベント「泉マルシェ」や、今回初開催となる食の芸術祭「TOHOKU REGENERATIVE FOOD FESTIVAL」への出店を予定しています(※最新の情報は『drop by GINKGO』のInstagramでご確認ください)。お店が少し遠いと感じる方にとっても、イベント会場で『drop by GINKGO』の美味しい料理を楽しむ絶好の機会となっています。
オープンから4年目を迎え、お店を持続させていくことと、サステナブルな取組を日常の中に無理なく楽しく浸透させていくことの両立に難しさを実感しながらも、武居さんは常に新しい挑戦と発信を続けています。
「環境に配慮した暮らし」と聞くと、少し難しかったり我慢が必要だったりするように感じてしまいますが、武居さんはそんなイメージに対して温かなメッセージを寄せてくれました。
「環境配慮って、難しいことをする必要はないんです。私たちが今日から簡単にできるのは、ごみを減らすこと。まずは、自分の生活の中で当たり前に使い捨てしているものや消耗品に目を向けてみてください。“本当に使い捨てじゃないとダメなのかな?”と一度疑問に思ってみることが大切です。
例えば、電子レンジを使う時に毎回使うラップを、繰り返し使えるシリコーン製の蓋に変えてみる。もちろん衛生面や用途によってはラップの方が適する場合もあります。ただ、「これならラップじゃなくても大丈夫だな」と思えるものを1つ見つけて変えてみるだけで、家庭から出るごみは確実に減っていきます。無理のない範囲で、変化を楽しみながら試してみることがおすすめです。
また、葉物野菜の茎や根菜類の皮など、今まで切り落としていた部分は、本当に食べられない部分なのかな?と考えてみるのもいいですね。どこまで食べられて、どんなものなら安心して食べられるのか。そんな視点で食材を選ぶことも、毎日の暮らしの中で楽しく気軽にできることの一つだと思います。」
おうちでできることからごみを減らす工夫を楽しみ、外出先ではお気に入りのマイ容器に美味しいデリを入れて持ち帰る。そんな日々から始まる「心地よいサステナブルな暮らし」が、あなたの日常をちょっと豊かにしてくれるかもしれません。






