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見切り品をおいしく再生!農家発・ドライ加工で広がる食品ロス削減の輪
食品ロスを減らす、農家発のアップサイクル
廃棄寸前の野菜や果物をおいしいドライフルーツに
形が不揃いだったり小さな傷があったり、店頭に並ぶうちに一番食べ頃の時期を逃してしまったり…。そうした理由で、まだ食べられる野菜や果物が廃棄されてしまうことがあります。
そんな“もったいない”を“おいしい!”に変えているのが、山寺 豪さん。太白区秋保でブルーベリー農園『ブルーブルーベリーファーム』を運営するかたわら、食品ロスの削減をめざして2024年からドライ加工品の製造を始めました。
廃棄の危機にあった青果物を乾燥させて保存性を高め、ドライフルーツ・乾燥野菜やフルーツティー、サングリアベースとして再生。味わいが凝縮されたこれらの商品は、高い人気を集めています。
自然の恵みを無駄にせず、持続可能な食の循環を生み出す──。山寺さんのアップサイクルへの取組をご紹介します。
“もったいない”という思いから、新しい挑戦が始まりました
ブルーベリー農園『ブルーブルーベリーファーム』を運営する山寺さんが就農したのは2021年。家族とともに地元・仙台へUターン移住したことがきっかけでした。
それまでは東京都内で営業職に就く会社員。以前から農業への関心があり、地元に戻るタイミングで思い切って就農を決意したといいます。
山寺さん
「一般的な農家だとブルーベリー以外の青果物も生産すると思いますが、僕は農業より会社員経験のほうが長い。それを活かすには農産加工品の製造や販売も手掛けるのがいいんじゃないか、と考えました。それに、もったいないことが昔からすごく嫌いなんです。マイナスをプラスに変えるときに一番モチベーションが上がるので、ドライフルーツならそれが実現できると思いました。」
こうして山寺さんは、規格外や見切り品の青果物を使ったドライ加工品の製造に挑戦します。乾燥機を導入し、つながりのある農家から分けてもらった野菜や果物で製造・販売を始めて数ヵ月。その取組が転機を迎えたのは、地元百貨店『藤崎』のバイヤーの目にとまったことでした。
バイヤーとの協議を経て、2024年に行われた「泉パークタウン50周年記念イベント」の出店に向けて、寺岡の『フードマーケットフジサキ』とのコラボレーションが実現。同店から出た見切り品を活用して、ドライフルーツのアップサイクル商品を製造しました。10月と12月に行われたイベントで販売すると、ブースはたくさんのお客さんで賑わい、商品も大好評でした。
山寺さん
「このイベントをきっかけに、『フードマーケットフジサキ』さんから毎週見切り品を仕入れられるようになりました。1回におよそ20kgを引き取り、ほとんどをドライ加工しています。」
廃棄されるはずだった野菜や果物が、賞味期限約300日のドライ加工品へと生まれ変わる──。乾燥させることで保存性が高まり、小さな傷も気にならず、味わいは一層濃厚に。
山寺さんの取り組みは、食品ロス削減と付加価値創出を同時に実現するアップサイクルの好例となっています。
廃棄寸前の青果物をおいしく再生できる、ドライ加工という選択
では実際に、ドライ加工品はどのように製造されているのでしょうか。原料は、前述の通り『フードマーケットフジサキ』の見切り品がメイン。さらに種類のバラエティや量のバランスを考慮して、近隣などの農家の方から、規格外などの野菜や果物を割安で購入しています。
仕入れた原料は、リンゴなどの大きなものは皮ごとスライス、ブルーベリーなどの粒状のものはそのまま乾燥機へ。『ブルーブルーベリーファーム』で導入している乾燥機は、遠赤外線により低温でじっくりと水分を抜く方式が特徴です。低温乾燥により、素材の色・香り・栄養価をできる限り残すことができます。
スライスは約15~16時間、粒状のものは数日かけて丁寧に乾燥。手間を惜しまない工程から、おいしさが凝縮されたドライフルーツが生まれます。その工程は、今なおブラッシュアップ中。より質の高いドライフルーツの製造をめざし、試行錯誤を続けています。
完成したドライフルーツを試食させてもらいました。今回試食したモモやナシ、イチジクは、セミドライのようなもっちりとした食感。砂糖や添加物を一切使っていないため、素材そのものの甘みと旨みが際立っていました。
山寺さん
「ドライフルーツ単体でもおいしいですが、今人気があるのはフルーツティーです。濃厚で奥行きのある味わいが好評ですね。僕がおすすめするのはサングリアベース。生の果物だとワインが果物の水分で薄まってしまいますが、ドライフルーツなら味が薄まらず、風味をしっかり楽しめます。」
商品は現在、自社ECを中心にオンライン販売を展開。不定期でイベント出店も行っています。また、公式サイトではドライフルーツを使ったレシピを50種類以上公開中。お菓子やドリンク、料理へのアレンジなど、ドライフルーツの新しい楽しみ方を提案しています。
人と人とのつながりで生まれる“アップサイクルの輪”
農業と農産加工の道に進んだ山寺さんは、土地探しからブルーベリー栽培、ドライ加工品の製造・販売まで、さまざまな人とのつながりのなかで事業を育ててきました。
秋保ワイナリーや、くまっこ農園など、地域の生産者からはぶどうや無農薬野菜を仕入れ、秋保温泉の宿泊施設では『ブルーブルーベリーファーム』のフルーツティーを提供。こうした“地域内アップサイクル”が、秋保の新たな食の循環を生み出しています。
ほかにも、山寺さんが直接足を運んだ果樹園やSNSなどを通してつながった農家とも連携が広がり、廃棄される青果物に新たな価値を吹き込むネットワークが徐々に拡大中です。
「農業を通した心地良いつながりをもっと増やしたい」と語る山寺さん。生産者や販売者だけでなく、商品を手に取る消費者もその輪の一員。『ブルーブルーベリーファーム』は、人と人、地域と地域をつなぐ“アップサイクルの輪”を広げ続けています。
ブルーブルーベリーファーム
https://blueblueberryfarm.jp/
オンラインショップ
https://shop.blueblueberryfarm.jp/






